【制度解説】寄付で地域貢献 企業版ふるさと納税って?わかりやすく解説!

企業版ふるさと納税は、企業が地方自治体の地方創生プロジェクトに寄付を行うことで税制優遇を受けられる制度です。2016年に導入されたこの仕組みは、企業の社会貢献と地方の活性化を同時に促進することを目的としていますが、どのような制度なのでしょうか。今回は、企業版ふるさと納税の制度について詳しくご紹介します。

企業版ふるさと納税とは?制度の特徴をピックアップ!

企業版ふるさと納税は、正式名称を「地方創生応援税制」といい、企業が自治体の地方創生事業に寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除を受けられる制度です。この制度は、地方創生や人口減少克服といった国家的課題に対応するため、2016年度に開始されました。

法人税負担の軽減効果がある

企業版ふるさと納税は、寄付額の全額が損金算入されます。そのため、法人税が、本来支払う額よりも寄付額の約3割程度抑えられます。
さらに、寄付額の最大約6割が法人税などから税額控除されます。
その結果、企業の実質的な負担は、寄付額の約1割にまで抑えられる可能性があるのです。
企業にとっては、負担額の10倍の寄付を行うことができるとも言い換えられます。
 
ただし、税額控除にはそれぞれ上限があります。
  • 法人住民税
    • 寄付額の4割を税額控除(法人住民税法人税割額の20%が上限)
  • 法人税
    • 法人住民税で4割に達しない場合、その残額を税額控除(寄付額の1割を限度とし、法人税額の5%が上限)
  • 法人事業税
    • 寄付額の2割を税額控除(法人事業税額の20%が上限)
 
企業によって企業負担にたいして寄付の効果を最大化することができる金額は異なります。実際に寄付を行う際には、事前に確認が必要です。
 

寄付の対象は、自治体の「事業」

寄付の対象となるのは、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトです。自治体は「まち・ひと・しごと創生寄付活用事業」を企画立案し、内閣府の認定を受ける必要があります。
 
自治体により、さまざまな事業を展開し、プロジェクトとして掲載していますが、「まち・ひと・しごと創生寄付活用事業」の中に位置づけられていれば、プロジェクトとして切り出されていなくても、企業が寄付を行うことは可能です。

寄付の下限額

企業版ふるさと納税の寄付額の下限は10万円からとなっており、企業にとって利用しやすい制度設計がなされています。
少額からでもスタートできるので、まずは一旦試してみるのも良いかもしれません。

制度の対象外となる寄付も

自社の本社が所在する自治体への寄付や、財政力の高い自治体(地方交付税の不交付自治体など)への寄付は、本制度の対象外となります。
たとえば、埼玉県さいたま市に本社がある企業が企業版ふるさと納税の制度を活用する場合は、「埼玉県」「さいたま市」以外の自治体に寄付を行う必要があります。

「返礼品」はなし!

個人版ふるさと納税とは異なり、返礼品などはありません。
企業版ふるさと納税では、自治体が寄付を行う法人に対し、その代償として経済的な利益を供与することが禁止されています。
しかし、各自治体で「ベネフィット」と呼ばれるお礼が用意されています。自治体の首長から感謝状が贈呈されたり、ホームページで企業名を紹介したりするなど、企業にとってはPRのチャンスになります。

人材派遣型の導入

企業版ふるさと納税には「人材派遣型」も存在します。
企業の専門的知識・ノウハウを持つ人材を自治体等へ派遣することで活用できます。
これにより、企業は地域とのつながりを持ち、自社のノウハウを活かして地域貢献をすることができます。派遣される方にとっても、自治体の内部で働くことができるのは貴重な経験であるという声もあります。
自治体にとっても、企業ならではのスキルやノウハウを持った方と事業を進めることができます。

企業と自治体のメリット

企業版ふるさと納税制度は、企業と自治体の双方にメリットをもたらします。

企業にはこんなメリットが!

  1. 税負担の大幅な軽減 前述のとおり、損金算入による法人税の軽減効果と、税額控除の影響で、実質的な負担が1割程度で済みます。 これは通常の寄付と比べて非常に大きな税制優遇です。
  1. CSR活動の推進 地方創生プロジェクトへの寄付を通じて、企業の社会的責任(CSR)活動を効果的に実施できます。これにより、企業イメージの向上や社会貢献の実績を積むことができます。
  1. 地域とのつながり強化 寄付先の自治体との関係構築により、将来的なビジネス展開や人材獲得につながる可能性があります。
  1. 人材育成の機会 人材派遣型の活用により、社員を地方自治体に派遣し、新たな経験や視点を得る機会を提供できます。
  1. 寄付先の選択自由 本社所在地以外の自治体を選んで寄付できるため、戦略的な地域貢献が可能です。

自治体にもメリットはたくさん!

  1. 財源の確保 地方創生プロジェクトの実施に必要な資金を、企業からの寄付という形で調達できます。
  1. 民間ノウハウの活用 企業の専門知識や経営ノウハウを活用し、より効果的な地方創生事業の実施が可能になります。
  1. 地域活性化の促進 企業の資金と知見を活用することで、地域の課題解決や新たな産業創出などの取り組みを加速できます。
  1. 企業との関係構築 寄付を通じて企業とのつながりができ、将来的な投資や進出の可能性が高まります。
  1. 地域の魅力向上 企業の支援を受けた独自の地方創生プロジェクトにより、地域の魅力や競争力を高めることができます。
  1. 柔軟な資金活用 国の交付金とは異なり、使途に関する制約が比較的少ないため、地域のニーズに合わせた柔軟な事業展開が可能です。
 
この制度により、企業は効果的な社会貢献と税制優遇を同時に実現でき、自治体は新たな財源と企業のリソースを活用した地方創生を推進できます。
双方にとってWin-Winの関係を構築できる点が、企業版ふるさと納税の大きな特徴といえるでしょう。

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税の違い

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税は、いずれも地方自治体への寄付を通じて地域貢献を行う制度ですが、いくつかの重要な違いがあります。
 
  • 寄付主体の違い 企業版ふるさと納税は企業が寄付主体となるのに対し、個人版ふるさと納税は個人が寄付主体となります。
 
  • 税制優遇の内容 企業版ふるさと納税では、法人関係税(法人住民税、法人税、法人事業税)から税額控除が受けられます。一方、個人版ふるさと納税では、個人住民税と所得税から税額控除または所得控除が受けられます。
 
  • 寄付対象事業 企業版ふるさと納税の対象は、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに限定されています。個人版ふるさと納税では、より幅広い自治体の事業が対象となります。
 
  • お礼品の有無 個人版ふるさと納税では、寄付者へのお礼品の提供が一般的ですが、企業版ふるさと納税ではお礼品の提供が禁止されています
 
  • 寄付額の下限 企業版ふるさと納税の寄付額下限は10万円からですが、個人版ふるさと納税では自治体ごとに設定された金額(通常は数千円程度)から寄付が可能です。
 
  • 人材派遣型の有無 企業版ふるさと納税には人材派遣型の仕組みがありますが、個人版ふるさと納税にはこのような仕組みはありません。
 
  • 控除限度額 企業版ふるさと納税の控除限度額は、法人住民税、法人税、法人事業税でそれぞれ定められています。個人版ふるさと納税の控除限度額は、個人住民税と所得税で異なる計算方法が適用されます。
 
このように、企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税は、寄付主体、税制優遇、対象事業、お礼品の扱いなどの点で異なる特徴を持っています。
両制度とも地域貢献を目的としていますが、企業版は企業の社会貢献とノウハウ活用に重点を置いているのに対し、個人版は個人の自由な寄付先選択とお礼品による魅力づけに特徴があるといえます。

企業と地方自治体が協働して地域活性化に取り組むための制度!ぜひ活用してみては

企業版ふるさと納税は、企業と地方自治体が協働して地域活性化に取り組むための有効な制度です。企業にとっては、税制優遇を受けながら社会貢献活動を行える魅力的な仕組みであり、自治体にとっては、地方創生事業の推進に必要な資金と企業のノウハウを獲得できるメリットがあります。
 
制度開始以降、全国の自治体で企業版ふるさと納税を活用した様々な取り組みが行われており、寄付金額と参加企業数は年々増加傾向にあります。令和4年度の実績では、寄付金額が約226億円、寄付件数が4,922件に上っています。
 
企業版ふるさと納税を通じて、地域の課題解決や魅力向上に向けた官民連携の取り組みが一層活発化することが期待されます。地方創生という国家的な課題に対し、企業と自治体がWin-Winの関係を構築しながら共に取り組んでいくことが、持続可能な地域社会の実現につながるでしょう。
地方創生や地域貢献へ関心の高い企業の方は、企業版ふるさと納税の制度を活用してみてはいかがでしょうか。
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