【制度解説】寄付で地域貢献 企業版ふるさと納税って?|企業版ふるさと納税バトンパス

企業版ふるさと納税は、企業が地方自治体の地方創生プロジェクトに寄附を行うことで税制優遇を受けられる制度です。2016年に導入されたこの仕組みは、企業の社会貢献と地方の活性化を同時に促進することを目的としていますが、どのような制度なのでしょうか。今回は、企業版ふるさと納税の制度について詳しくご紹介します。

【制度解説】寄付で地域貢献 企業版ふるさと納税って?

企業版ふるさと納税は、企業が地方自治体の地方創生プロジェクトに寄附を行うことで税制優遇を受けられる制度です。2016年に導入されたこの仕組みは、企業の社会貢献と地方の活性化を同時に促進することを目的としていますが、どのような制度なのでしょうか。今回は、企業版ふるさと納税の制度について詳しくご紹介します。

企業版ふるさと納税とは?制度の特徴をピックアップ!

企業版ふるさと納税は、正式名称を「地方創生応援税制」といい、企業が地方公共団体の地方創生事業に寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除を受けられる制度です。この制度は、地方創生や人口減少克服といった国家的課題に対応するため、2016年度に開始されました。

法人税負担の軽減効果がある

企業版ふるさと納税では、通常の寄付による約3割の損金算入効果に加え、法人住民税・法人税で4割、法人事業税で2割の税額控除が適用されます。これにより、最大で寄付額の9割の税負担軽減効果が得られます。

寄付の対象は、地方公共団体の「事業」

寄付の対象となるのは、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトです。自治体は「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を企画立案し、内閣府の認定を受ける必要があります。

寄付の下限額

企業版ふるさと納税の寄付額の下限は10万円からとなっており、企業にとって利用しやすい制度設計がなされています。少額からでもスタートできるので、まずは一旦試してみるのも良いかもしれません。

制度の対象外となる寄付も

自社の本社が所在する自治体への寄付や、財政力の高い自治体(地方交付税の不交付自治体など)への寄付は、本制度の対象外となります。

「返礼品」はなし!

個人版ふるさと納税とは異なり、企業版ふるさと納税では内閣府令により、地方公共団体が寄付を行う法人に対し、その代償として経済的な利益を供与することが禁止されています。しかし、各地方公共団体で「ベネフィット」と呼ばれるお礼が用意されています。地方公共団体の首長から感謝状が贈呈されたり、地方公共団体のホームページで企業名を紹介したりするなど、企業にとってはPRのチャンスになります。

人材派遣型の導入

企業版ふるさと納税には「人材派遣型」も存在し、企業の専門的知識・ノウハウを持つ人材を地方公共団体等へ派遣することで活用できます。これにより、企業は地域とのつながりを持ち、企業ノウハウを活かした地域貢献や人材育成の機会を得ることができます。

控除上限額

税額の優遇があるとはいえ、税の種類ごとに控除の上限が設けられています。法人住民税については法人住民税法人税割額の20%、法人税については法人税額の5%(法人住民税の控除額が寄付額の20%に達しない場合)、法人事業税については法人事業税額の20%がそれぞれ上限として定められています。

企業と自治体のメリット

企業版ふるさと納税制度は、企業と自治体の双方にメリットをもたらします。

企業にはこんなメリットが!

  1. 税負担の大幅な軽減: 寄附額の最大9割が税額控除されるため、実質的な負担が1割程度で済みます。これは通常の寄附と比べて非常に大きな税制優遇です。
  1. CSR活動の推進: 地方創生プロジェクトへの寄附を通じて、企業の社会的責任(CSR)活動を効果的に実施できます。これにより、企業イメージの向上や社会貢献の実績を積むことができます。
  1. 地域とのつながり強化: 寄附先の自治体との関係構築により、将来的なビジネス展開や人材獲得につながる可能性があります。
  1. 人材育成の機会: 人材派遣型の活用により、社員を地方自治体に派遣し、新たな経験や視点を得る機会を提供できます。
  1. 寄附先の選択自由: 本社所在地以外の自治体を選んで寄附できるため、戦略的な地域貢献が可能です。

自治体にもメリットはたくさん!

  1. 財源の確保: 地方創生プロジェクトの実施に必要な資金を、企業からの寄附という形で調達できます。
  1. 民間ノウハウの活用: 企業の専門知識や経営ノウハウを活用し、より効果的な地方創生事業の実施が可能になります。
  1. 地域活性化の促進: 企業の資金と知見を活用することで、地域の課題解決や新たな産業創出などの取り組みを加速できます。
  1. 企業との関係構築: 寄附を通じて企業とのつながりができ、将来的な投資や進出の可能性が高まります。
  1. 地域の魅力向上: 企業の支援を受けた独自の地方創生プロジェクトにより、地域の魅力や競争力を高めることができます。
  1. 柔軟な資金活用: 国の交付金とは異なり、使途に関する制約が比較的少ないため、地域のニーズに合わせた柔軟な事業展開が可能です。
 
この制度により、企業は効果的な社会貢献と税制優遇を同時に実現でき、自治体は新たな財源と企業のリソースを活用した地方創生を推進できます。双方にとってWin-Winの関係を構築できる点が、企業版ふるさと納税の大きな特徴といえるでしょう。

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税の違い

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税は、いずれも地方自治体への寄附を通じて地域貢献を行う制度ですが、いくつかの重要な違いがあります。
  1. 寄附主体の違い:企業版ふるさと納税は企業が寄附主体となるのに対し、個人版ふるさと納税は個人が寄附主体となります。
  1. 税制優遇の内容:企業版ふるさと納税では、法人関係税(法人住民税、法人税、法人事業税)から税額控除が受けられます。一方、個人版ふるさと納税では、個人住民税と所得税から税額控除または所得控除が受けられます。
  1. 寄附対象事業:企業版ふるさと納税の対象は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに限定されています。個人版ふるさと納税では、より幅広い自治体の事業が対象となります。
  1. お礼品の有無:個人版ふるさと納税では、寄附者へのお礼品の提供が一般的ですが、企業版ふるさと納税では内閣府令によりお礼品の提供が禁止されています。
  1. 寄附額の下限:企業版ふるさと納税の寄附額下限は10万円からですが、個人版ふるさと納税では自治体ごとに設定された金額(通常は数千円程度)から寄附が可能です。
  1. 人材派遣の有無:企業版ふるさと納税には人材派遣型の仕組みがありますが、個人版ふるさと納税にはこのような仕組みはありません。
  1. 控除限度額:企業版ふるさと納税の控除限度額は、法人住民税、法人税、法人事業税でそれぞれ定められています。個人版ふるさと納税の控除限度額は、個人住民税と所得税で異なる計算方法が適用されます。
このように、企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税は、寄附主体、税制優遇、対象事業、お礼品の扱いなどの点で異なる特徴を持っています。両制度とも地域貢献を目的としていますが、企業版は企業の社会貢献とノウハウ活用に重点を置いているのに対し、個人版は個人の自由な寄附先選択とお礼品による魅力づけに特徴があるといえます。

企業と地方自治体が協働して地域活性化に取り組むための制度!ぜひ活用してみては

企業版ふるさと納税は、企業と地方自治体が協働して地域活性化に取り組むための有効な制度です。企業にとっては、税制優遇を受けながら社会貢献活動を行える魅力的な仕組みであり、自治体にとっては、地方創生事業の推進に必要な資金と企業のノウハウを獲得できるメリットがあります。
制度開始以降、全国の自治体で企業版ふるさと納税を活用した様々な取り組みが行われており、寄附金額と参加企業数は年々増加傾向にあります。令和4年度の実績では、寄附金額が約226億円、寄附件数が4,922件に上っています。
企業版ふるさと納税を通じて、地域の課題解決や魅力向上に向けた官民連携の取り組みが一層活発化することが期待されます。地方創生という国家的な課題に対し、企業と自治体がWin-Winの関係を構築しながら共に取り組んでいくことが、持続可能な地域社会の実現につながるでしょう。
地方創生や地域貢献へ関心の高い企業の方は、企業版ふるさと納税の制度を活用してみてはいかがでしょうか。
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