【事例紹介】企業版ふるさと納税令和6年度大臣表彰受賞 島根県江津市

令和6年度企業版ふるさと納税大臣表彰を受賞日本海に面する島根県西部の小さな市・江津市 「東京から最も遠いまち」が紡ぐ企業連携と地域再生への道のりテレビ東京との連携で広がる江津市のシティプロモーション戦略田村淳のたまり場から江津市へ:メディアと企業が連携した地方創生の新モデル高速道路開通を見据えた江津市の公園再生プロジェクト過疎地の駅舎が醸造所に変身!波子駅リブランディング事業メディア連携がもたらす江津市の「発信力循環」:シティプロモーションの成功事例として注目される地方創生モデル
企業版ふるさと納税とは、企業が地方自治体に寄付を行うと税制優遇を受けられる仕組みで、2016年にスタートしました。制度を通じて、全国各地で様々な地域活性化の取り組みが行われています。内閣府では2018年度から、特に優れた成果を出した自治体と企業を表彰しており、今年も各都道府県から推薦された事例について審査が行われ、表彰式が開催されました。この記事では、表彰された地方公共団体の1つである島根県江津市の取り組み事例を紹介します。
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令和6年度企業版ふるさと納税大臣表彰を受賞
2024年12月に、企業版ふるさと納税の大臣表彰式が行われました。北海道札幌市は自治体部門でこの大臣表彰を受賞しています。
「共創型地域創生」をテーマに取り組んだ離島振興の取り組みが評価されました。
日本海に面する島根県西部の小さな市・江津市

島根県の中央部よりやや西寄りに位置する江津市は、江の川の河口に開かれた人口約2万1千人の小さなまちです。
島根県内最小の市でありながら、古来より川の舟運と日本海への海運の結節点として栄え、河岸には船問屋が立ち並ぶ活気ある光景が広がっていました。良質な粘土資源を活かした石見焼や岩州瓦などの窯業が盛んな地場産業として知られ、歴史ある有福温泉などの温泉リゾートや美術館などの観光施設、豊かな自然環境にも恵まれています。
「東京から最も遠いまち」が紡ぐ企業連携と地域再生への道のり
江津市は、数々の課題を抱える中で、特に人口減少が顕著に続いており、2040年度には17,000人程度まで減少すると予想されています。
かつては石州瓦が有名で瓦の三大産地の1つとして知られていましたが、この産業も徐々に衰退し、東部の工業団地での製造業が主要産業となっています。未来を担うはずの若者の多くは高校卒業や大学卒業を機にで市外へ流出しています。
このような逆境をチャンスに変えるべく、市は「人」を中心に据えた独自の施策を展開。市外部との接点の少なさという壁を乗り越え、積極的に市外・県外との関わりを模索していきました。
特に「東京から最も遠いまち」という地理的ハンディキャップを逆手に取った戦略が、域外企業との新たな関わりを生み出したのです。そして市は、単なる財政的視点にとどまらず、企業との「関係構築」という本質的な価値を重視する姿勢へと舵を切りました。
この画期的な取り組みが、テレビ東京とその番組に参画する数多くの企業からの寄付という形で実を結び、新たな出会いと協働の扉を開くことになったのです。
テレビ東京との連携で広がる江津市のシティプロモーション戦略

令和5年6月11日の放送で、江津市のシティプロモーション事業担当職員が出演し、同年の10月22日の放送で江津市の取り組みが継続的に紹介されました。
市は「どんなに素晴らしい事業も、そもそも町が知られていなければ存在していないのと同じ」という多くの地方自治体に共通する課題を認識し、まずはシティプロモーションに注力することを決断。地域そのもの、抱える課題、市の取り組みの3つを知ってもらうことが必要だと考えました。そこで、テレビ番組を軸にして具体案を一緒に検討し、その過程もシティプロモーションのコンテンツとして位置づけることで、効果的な情報発信の取り組みを実施しました。
田村淳のたまり場から江津市へ:メディアと企業が連携した地方創生の新モデル

テレビ東京「田村淳のたまり場」とその参画企業、江津市役所と市内企業、さらに市内の地域コミュニティが連携し、企業版ふるさと納税を活用したシティプロモーションの取り組みを展開しました。
この取り組みでは、メディアがもつ発信力を活用して新たな人・物・金・情報との接点を創出することで、市の課題解決や活性化に向けた取り組みの進化に貢献しています。
高速道路開通を見据えた江津市の公園再生プロジェクト

江津市では、数年後に控える山陰自動車道の最後の区間が開通されます。高速道路開通後、地域内外から人が訪れる新たな目的地としての魅力づくりに取り組んでいます。
その目的地の一つが、東京ドーム7個分の広さをもつ菰沢公園です。周囲約2kの自然の池を有し、芝生公園、遊具、バスケットコート、スケートボード場、さらにオートキャンプ場も併設された多機能な施設となっています。このプロジェクトでは、菰沢公園のリブランディングを行いました。
テレビ番組の関係者や株式会社みらいワークスと連携し、同社の地方副業マッチングプラットフォーム「SKILL Shift」を通じてアイデアを全国から募集。テストイベントとしては、世界基準のルールに則ったかくれんぼなども実施されました。
対象となる公園は周囲約2kの自然の池を有し、芝生公園、遊具、バスケットコート、スケートボード場、さらにオートキャンプ場も併設された多機能な施設となっています。
過疎地の駅舎が醸造所に変身!波子駅リブランディング事業

さらに進められたのは、無人駅である波子(はし)駅のリブランディング事業です。
この事業を進めたのは、番組内で地方創始を担当していた株式会社ABI(以下、ABI)の元社員の方。ABIが江津市へ企業版ふるさと納税人材派遣型を活用して寄付を行い、社員の方が江津市へ移住、市の職員として動いていたのです。
番組内を通じて新たな拠点づくりのアイディアを検討し、地元の方へのヒアリングを実施したり、外部の視点も取り入れたりした結果、市が所有する波子駅の駅舎内にクラフトビールの醸造所「石見麦酒」を設置することになりました。
石見麦酒は2015年に夫婦二人が江津市で立ち上げたブルワリー。地元の素材を活かした個性豊かな商品を開発・販売しています。醸造所が完成した波子駅にはカウンターが設置され、クラフトビールを購入することもできるようになりました。
この取り組みは新聞やテレビ、雑誌などで取り上げられ、ビールを目的に多くの来訪者が訪れるようになりました。さらに麦酒列車ツアーの実施や波子海水浴場でのビアガーデン開催により、県外からの来訪者も増加し、駅舎に新しい価値を付加することに成功しています。
メディア連携がもたらす江津市の「発信力循環」:シティプロモーションの成功事例として注目される地方創生モデル

江津市は、課題やプロセスも含め、地域で起こっていることをありのままに発信することを大切にしています。
このオープンな姿勢によるシティプロモーションを通じて、新たな出会いや交流、連携を生み出すことに成功しました。特にテレビ東京の番組との連携では、メディアが持つ発信力や仲介機能を活用することで、より多様な官民連携の創出につながるプラスの循環を形成しました。江津市では今後も、この好循環が広く届くように、直面する課題も含めた取り組みを引き続き積極的に発信していく方針です。
参考
事業構想「石見麦酒 無人駅を拠点に、ビールで新たなコミュニティを創出」https://www.projectdesign.jp/articles/5bc1fe2e-edc1-4aba-b730-3dbe01c49017
江津市HP 波子駅に石見麦酒のクラフトビール醸造所がOPENしました
https://www.city.gotsu.lg.jp/site/city-promotion/34600.html
テレビ東京 田村淳のTaMaRiBa〜江津THE SECONDって、何だ!?
https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/202407/25909_202407072620.html
テレビ東京プラス 人口減少、空き家問題、認知度の低さ、医療の高齢化…課題を抱える地方都市のリアルな悩みが浮き彫りに
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2022/026880_2.html
株式会社みらいワークス みらいワークス×テレビ東京・田村淳のTaMaRiBaプロジェクト
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000206.000016557.html
POTLUCK YAESU 「東京から一番遠いまち」と呼ばれるまちが企業版ふるさと納税で得た、お金より価値あること
https://www.potluck-yaesu.com/magazine/20250225/3061/
しまねまちなび 江津市
https://www.shimane19.net/shichoson/gotsu-info/
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