【事例紹介】秋田県秋田市の映画を活用した企業版ふるさと納税の事例―令和6年度大臣表彰受賞―

企業版ふるさと納税とは、企業が地方自治体に寄付を行うと税制優遇を受けられる仕組みで、2016年にスタートしました。制度を通じて、全国各地で様々な地域活性化の取り組みが行われています。内閣府では、2018年度から特に優れた成果を出した自治体と企業を表彰しており、2024年12月には、今年度の表彰式が開催されました。この記事では、表彰された自治体の1つである秋田県秋田市の映画を活用した事例を紹介します。
 
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令和6年度企業版ふるさと納税大臣表彰を受賞

2024年12月に、企業版ふるさと納税の大臣表彰式が行われました。秋田県秋田市はこの大臣表彰を受賞しています。
内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトでは、表彰式でのプレゼンテーションの動画も公表されています。
 
 

映画制作で若者の活力を引き出す秋田市の挑戦

 
 
秋田県秋田市では、企業版ふるさと納税の一貫として、地域の未来を担う若者たちの夢と創造性を育む革新的なプロジェクトが行われました。「MIRRORLIAR FILMS」との連携により、一流のクリエイターと地元学生が協働し、短編映画製作を通じた地方創生の取り組みを展開しています。

秋田市のプロジェクトの背景

学術都市・秋田が抱える若者流出の課題

「米の秋田は酒の国」「美人を育てる秋田米」のキャッチフレーズで知られる秋田県秋田市は、人口約30万人を擁する都市です。同市は、「個性的な大学が集まる学生のまち」としても特徴づけられ、6校の大学に7,324人の学生が通います。
国公立大学として秋田公立美術大学、秋田大学、国際教養大学、秋田県立大学があり、県外出身者の学生は全体の7割を占めます。また、私立大学には日本赤十字秋田看護大学、ノースアジア大学があります。
 
しかし、近年は、10-20代の若者の流出という課題に直面しています。
その背景には、若者の「働きたい企業がない」「地方=挑戦できない、何もない、自己実現ができない」という諦めや思い込みがありました。
このような状況を踏まえ、「地方でもできる、地方だから出来る」という認識への転換が秋田市の重要なミッションとして掲げられています。
 

新たな人の流れを創出する総合戦略

 
第二期秋田市まち・ひと・しごと創生総合戦略では、「多様なつながりを築き、秋田市への新しい人の流れをつくる」という基本目標が設定されました。「多様な人材の活躍を推進」のため、まちの魅力の創出やシティプロモーションを展開しています。
人口減少下においても、若者や地方に関心がある人が集い、刺激し合い、新たなビジネスや産業芸術文化をはじめとする新たな可能性を生み出す活気あるまちを目指して、若者たちが希望や可能性を感じることができる環境づくりに注力しています。
 

具体的な取り組み:文化創造のまちの実現に向けて

秋田市は文化創造館、秋田芸術劇場ミルハス、美術館など中心市街地の芸術・文化ゾーンを整備しました。さらに、北海道・東北で唯一の公立美大である秋田公立美大の人的資源やネットワークを活用し、芸術文化を切り口とした市民活動(文化創造プロジェクト)を推進しました。
このクリエイティブな街づくりの土壌をさらに活かすため、今回、MIRRORLIAR FILMS PROJECTとの連携が開始されました。
 

秋田市での映画を活用したまちづくり事業とは

短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILM PROJECT」

 
MIRRORLIAR FILMS PROJECTは、短編映画制作プロジェクトです。
「誰でも映画を撮れる時代」というコンセプトのもと、2021年から活動を開始しました。新しいクリエイターの発掘や、映画制作のきっかけや魅力を届けることも目的としています。
映画撮影未経験の俳優や、漫画家、さらには一般公募で選ばれた市民まで、幅広い層に映画制作の機会を提供しており、年間で20本のショートフィルムを収集し、5作品ずつ1年半かけて上映する取り組みを展開しています。

秋田市で行われた MIRRORLIAR FILMS AKITA (Season 5・6)

秋田市とMIRRORLIAR FILMSは、映画制作を通じたシティプロモーション地方創生事業に関する協定を結び、連携を強化しました。
この協定により、秋田市での映画制作支援や上映会、ワークショップなどの参加型の取り組みが実施されることになりました。
また、秋田市の「個性的な大学が集まる学生のまち」という強みを生かし、市内6大学の参加したい学生を集めて、プロジェクトがスタートしました。
 

まちが一体となって若者の挑戦を応援

このプロジェクトを進めるにあたり、多くの団体がこのプロジェクトに携わりました。
  • MIRRORLIAR FILMS PROJECT:事業パートナーとしての機会提供、ワークショップの企画運営
  • 秋田市の市民有志から構成された実行委員会:地元クリエイター、イベント企画のプロ、SNS投稿者など多様なメンバーで構成
  • 寄付企業:企業版ふるさと納税による事業資金の提供
 

事業①:一流クリエイターと学ぶ映画制作の現場で第一線の創造性に触れる

 
プロジェクトの中核となるのが、一流クリエイターによる短編映画制作です。
シーズン5では竹中直人監督と大橋裕之監督、シーズン6では小栗旬監督と浅野忠信監督が参加し、計4本の短編映画が秋田市で制作されました。
市内の大学生たちは、制作補助や演出補助として現場に参加し、プロの映画制作を間近で体験する機会となりました。
 

事業②:短編映画制作を学ぶ体験型ワークショップ

 
学生自身による短編映画制作も実施しています。
まち歩きを通じて発見した地域資源をモチーフに、プロの指導を受けながら、撮影から出演、美術制作、ポスター制作まで一貫して行いました。
 

事業③:映画を通したシティプロモーション

 
「情報格差、文化格差の背景を踏まえ、映画館のない地域でも映画を届けたい」との思いから、全国のカラオケボックス2070か所での映画上映、Lemino・Amazon Prime Videoなどの動画配信プラットフォームによる配信、市内の上映イベントを行いました。
さらに、国際映画祭であるグローバルステージハリウッドでの上映も行われました。これらの取り組みを通して、「地方でも挑戦できる」というメッセージや「企業版ふるさと納税企業と連携した画期的な取組」に挑戦していることを全国・世界へと発信し続けています。
 

寄付企業との連携:Win-Winの関係構築

これらの事業にかかる費用は、企業版ふるさと納税による寄付を通じて集められました。
寄付を行った企業とも様々な方法で連携をしています。
 
  • PRイベントへの登壇機会の提供
  • 作品のエンドクレジットへの企業名掲載
  • 若手社員の映像制作ワークショップへの参加
  • 映画グッズ開発やマーケティング講座の講師としての参画
  • 映像制作用スマートフォンの貸し出し
  • 動画配信サービス等のメディア連携(Lemino等)
 

プロジェクトがもたらした3つの成果:地域変革への道筋

秋田市で行われたMIRRORLIAR FILMS AKITAを通じて、秋田市には多くの成果がありました。
 
  1. 未来を担う若者のシビックプライド醸成
    1. 「秋田市の魅力を改めて知る機会になった」「秋田でも夢が叶えられることが分かった」 という若者からの声
       
  1. 可能性を拡げる関係人口づくり
    1. 市民(学生/若手クリエイター)と応援団(一流クリエイター/寄付企業)との協働による、継続的な交流と新たなプロジェクトの創出
       
  1. 選ばれるためのシティプロモーションの推進
  「若者の挑戦を応援するまち」として、全国及び世界に向けた効果的な情報発信を実現
 
これらの成果が、持続可能な地域活性化モデルとして評価され、企業版ふるさと納税大臣表彰に選出されました。
 

全国に広がる秋田モデル

秋田市のこれらの取り組みは、収益の地域還元を実現するモデルケースとして注目を集めています。現在、全国20地域以上から関心が寄せられ、石川県金沢市、大阪府、京都府、静岡県三島市、東京都、愛知県東海市、岡山県など、各地での展開が進んでいます。

地方創生の新たな展開

 
プロジェクトの経験を活かし、小学生と若手クリエイターによる地域映画制作など、新たな取り組みも始まっています。映画が生み出す地方創生と地域の枠組みを超えた地域連携の、これからの展開にも注目です。
 
▼そのほかの令和6年度大臣表彰受賞事例
 
参考
内閣府 企業版ふるさと納税に係る大臣表彰
令和6年度企業版ふるさと納税地方創生応援税制に係る大臣表彰式
秋田市 【MIRRORLIAR FILMS AKITA】Season 5(未来創造人材育成・プロモーション事業)
秋田市 【MIRRORLIAR FILMS AKITA】Season 5(未来創造人材育成・プロモーション事業)
【令和六年度】企業版ふるさと納税を活用した優良事例を表彰する『企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式』を開催。全国の4つの自治体と3つの企業が受賞
Web東奥 「MIRRORLIAR FILMS AKITA文化祭」11/16開催決定
MIRRORLIAR FILMS AKITA 「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」秋田市とMIRRORLIAR FILMSの取組みが受彰決定
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