【事例紹介】エア・ウォーター北海道株式会社の企業版ふるさと納税の取り組み―令和6年度大臣表彰受賞―

企業版ふるさと納税とは、企業が地方自治体に寄付を行うと税制優遇を受けられる仕組みで、2016年にスタートしました。制度を通じて、全国各地で様々な地域活性化の取り組みが行われています。内閣府では、2018年度から特に優れた成果を出した自治体と企業を表彰しており、2024年12月には、今年度の表彰式が開催されました。
この記事では、表彰された企業の1つであるエア・ウォーター北海道株式会社の取り組みについて取り上げます。
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令和6年度企業版ふるさと納税大臣表彰を受賞エア・ウォーター北海道:グローバルな視野と地域貢献を両立する総合産業グループ北海道の潜在力を活かした地域課題解決への挑戦:ふるさと応援H(英知)プログラムの誕生「ふるさと応援Hプログラム」の概要プログラムの指針と選定基準名称に込められた意義企業版ふるさと納税を利用した各町村の取り組み事例1. 東川町の取り組み2. 幌加内町の取り組み3. 滝上町の取り組み4. 更別村の取り組み企業版ふるさと納税で地域社会の活性化に寄与
令和6年度企業版ふるさと納税大臣表彰を受賞
2024年12月に、企業版ふるさと納税の大臣表彰式が行われました。エア・ウォーター北海道株式会社(以下、エア・ウォーター北海道)は企業部門でこの大臣表彰を受賞しています。
エア・ウォーター北海道:グローバルな視野と地域貢献を両立する総合産業グループ
エア・ウォーター北海道は、創業から間もなく50周年を迎える北海道を代表する総合産業グループです。
1929年に札幌で創業して以来、「人命を救い、地域産業の発展に尽くす」という理念のもと、産業・医療用ガスの供給からスタートし、現在は4つの主要事業を展開しています。
デジタル&インダストリー部門では、製鉄所や自動車製造工場向けの産業ガス供給を手がけ、エネルギー&ソリューション部門ではLPガスなどの生活エネルギーと家畜糞尿由来のエネルギープラットフォームを構築しています。
さらに、ヘルス&セーフティ部門で病院設備工事や介護福祉施設向けの衛生材料提供を行い、アグリ&フーズ部門では畑から食卓までの一貫体制を実現しています。
1950年代のLPガス事業参入、1980年代の冷凍食品事業展開を経て、2023年3月期には連結売上高1兆円を超える企業グループへと成長しました。
社会課題解決を通じた企業価値の創造を目指し、イノベーション施設「エアウォーターの森」の活用や「ふるさと応援Hプログラム」による自治体支援など、地球環境とウェルネスに焦点を当てた事業展開を進めています。
北海道の潜在力を活かした地域課題解決への挑戦:ふるさと応援H(英知)プログラムの誕生
エア・ウォーター北海道は、道内179市町村のうち約100市町村を訪問し、地域が直面する深刻な社会課題の実態調査を実施しました。
その結果、札幌などの都市部への人口集中による地方からの人口流出や高齢者の孤立、公共サービス利用者の減少、地方の消費者・生産者の減少による経済活動の縮小、さらには労働力不足による生産量の減少や事業撤退、高齢者サービスのコスト上昇など、複合的な課題が浮き彫りになりました。
加えて、インフラ維持の困難化や公共サービスの質の低下、働き口不足といった問題も深刻化しており、これらの課題が互いに連鎖して地域社会の悪循環を生み出しています。
しかし一方で、広大な面積を有する北海道には、200%を超える食料自給率や国内随一の再生可能エネルギー資源など、世界が直面する社会課題の解決に貢献しうる大きな潜在力が眠っています。
1869年の北海道開拓使設置から154年、類を見ない速さで開発が進んできた北海道には、今なお広大な耕地と多様な資源が存在しています。
このような背景のもと、北海道に育てられた企業としての使命感から、エア・ウォーター北海道は道内全179市町村を対象とした寄付支援制度「ふるさと応援H(英知)プログラム」(以下、「ふるさと応援Hプログラム」)を創設し、北海道に暮らす人々の安全安心で豊かな暮らしの実現に向けた、地域課題の解決に取り組むことを決意しました。
「ふるさと応援Hプログラム」の概要
エア・ウォーター北海道は「ふるさと応援Hプログラム」を創設し、2023年度から2030年度までの8年間で総額10億円を上限とし、道内179市町村を対象とした寄付支援を実施します。
寄付を受ける自治体の事業内容は、小規模な事業まで幅広く応募を可能にしています。このプログラムは「地球環境」や「ウェルネス」などの観点を含め、さまざまな社会課題の解決に貢献する市町村の事業を広く対象として、毎年募集を行います。
プログラムの指針と選定基準
寄付支援事業の選定にあたっては、地域行政や経済に見識を有する社外有識者で構成される「ふるさと応援Hプログラム推進委員会」を設立し、持続性・注目性・創造性・協働性・地域への貢献を総合的に判断して決定します。
名称に込められた意義
「ふるさと応援Hプログラム」の名称に含まれる「H」は、
HOKKAIDO(北海道)
HOPEFUL(希望)
HUMANITY(人間性)
HARMONY(調和)
HORIZON(地平線)
の意味を持ち、さらに「創業者精神をもって 空気、水、そして地球に関わる事業の創造と発展に『英知』を結集する」という組織理念を込めています。
企業版ふるさと納税を利用した各町村の取り組み事例
2023年度、ふるさと応援Hプログラムへの応募自治体数は、46町村、応募事業数は52事業、寄付決定自治体数は18市町村、寄附総額は1億1,335万円となりました。代表して4つの町村の事例を紹介します。
1. 東川町の取り組み
- 事業費:754万円(全額寄付)
- 内容:資源米由来のごみ袋「ライスレジン」の製作
- 目的:脱炭素化実現と水稲作付面積の維持確保
2. 幌加内町の取り組み
- 事業費:1,000万円(寄付額700万円)
- 内容:そば殻などの未利用資源を活用した新製品開発
- 特徴:高校生とベンチャー企業の協働による地域資源活用
3. 滝上町の取り組み
- 事業費:34,300万円(寄付額700万円)
- 内容:木質バイオマスを活用した陸上養殖とエゾシカ加工施設の運営
- 目的:再生可能エネルギーの活用と新産業創出
4. 更別村の取り組み
- 事業費:3,300万円(寄付額700万円)
- 内容:コミュニティナース事業による高齢者見守り
- 特徴:デジタルとマンパワーのハイブリッド型サービス
企業版ふるさと納税で地域社会の活性化に寄与
寄付活動は今後も継続され、現在、79の市町村から社会課題をヒアリングし、それらの課題解決に向けて企業版ふるさと納税を活用しながら、可能な限り多くの取り組みを行っています。
さらに、2023年度から2030年度までの10年間にわたり、自治体への寄付制度として「ふるさと応援Hプログラム」を実施し、地域社会の活性化と持続可能な発展に寄与していく方針です。
参考
内閣府 企業版ふるさと納税に係る大臣表彰
令和6年度企業版ふるさと納税地方創生応援税制に係る大臣表彰式
北海道の自治体向け寄付制度「ふるさと応援H(英知)プログラム」 ~2024年度の概要と募集開始のお知らせ~
北海道の自治体向け寄付支援制度「ふるさと応援H(英知)プログラム」の「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」企業部門受賞のお知らせ
北海道の自治体向け寄付支援制度「ふるさと応援H(英知)プログラム」を創設 ~寄付を通じて社会課題の解決に取り組む市町村を支援~
エア・ウォーター北海道 ふるさと応援H(英知)プログラム 選定結果
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